今回の生産背景レポートの舞台は、”京都府”。昔ながらの風情を感じる町並みや、古き良き日本の文化が今も深く根づいている場所。伺った先は、染色屋さん。現在、開発段階にある「Wakayama Azuma knit T-shirt」は、着込むほどに風合いが増していき、愛着の持てる商品に仕上げたいという思いがあります。それを実現させるためのポイントとなるのは、生地もさることながら染色も重要です。様々な染色手法がある中、採用に至ったのは「Garment Dye / 製品染め」。製品が仕上がってから染める方法です。製品になってから染めるということは、縫い目も生地も同じ色に染色されるということ。それにより縫い目が生地に馴染み、先染め製品にはない独特の風合いが生まれます。そして着込むほどに絶妙なアタリや色ムラが生まれ、着用した人の痕跡が反映されパーソナルな一着に仕上がります。それこそが今回「Garment Dye / 製品染め」を採用して商品を作る目的です。
依頼をしたのは、30年染色一筋の職人さん。京都が育んできた高級絹織物「西陣織」を手がけた伝統工芸士の先代から職人としての志を受け継ぎ、高い技術とプライドを持って染色活動に取り組まれています。今回の「Wakayama Azuma knit T-shirt」は、和歌山県「アズマ編み機」で糸の密度を詰めて編み上げた、いわゆる”度詰め”生地。大量生産の生地と比較して染まり具合が異なり、通常の工程よりも1.5倍ほどの手間をかけて染め上げられます。そうすることで、染め上げた後に独特の風合いが生まれます。
一番初めの工程は、”手染め”。染料を添加した際に出る反応や表情を細かく確認する為の重要な工程です。染料の割合や置時間、また染めた時の縮率を考慮した微調整を重ねます。この手染めによる調整こそが、職人さんの長年の経験と確かな技術だからこそなし得る技です。試行錯誤を繰り返しターゲットの色が定まったところで、現在では数少ない昔ながらのドラム型の機械を使って染め上げていきます。
着込むほどに風合いが増していき、愛着の持てる商品に仕上げたいという思いから始まった商品づくり。30年染色一筋の職人さんが染め上げるものには、きっと長い年月の経験を積んできた人の手だからこそ生み出すことができる染色の魅力を纏った商品になることと思います。