生産背景:奄美大島「泥染め」

生産背景:奄美大島「泥染め」

奄美大島で行われている染色技法「泥染め」。古くは奈良時代から始まり、そこから約1300年以上もの長い歴史があります。世界でたった一つの技法は、移りゆく時代の中でも現代まで途切れることなく、自然豊かな土地とそこに住まう人々の手によって、丁寧に受け継がれてきました。

今回、私たちが【15.5oz "Amami Doro-Zome" Denim Sweat】の染色を依頼したのは、 創業から70年以上続く染め屋さん。泥染めの伝統を守りながらも、新たなアプローチを通じて現代のニーズに落とし込むことで、その魅力を伝え続けています。

泥染めとは、島の伝統工芸品「大島紬」を染めるための制作工程のことを言います。工程の一部とはいえ、そこには、鉄分を多く含む古代の地層からなる泥、厳しい環境で育つ豊富なタンニンを含む車輪梅、そして温暖な奄美大島の気候があって初めて成り立つもの。世界で唯一、奄美大島でしか行われていない理由には、この島ならではの自然環境が関係しています。

ただ、この泥染めという技法が誕生するには、奄美大島の歴史背景が色濃く影響している事実もあります。かつて様々な時代で統治を受けてきた影響と、その中で島の資源を自らの生活で循環させてきた先人達の知恵があったからこそ、独自の深みを持つこの技法が生まれたのです。

単に泥染めといえど、泥で染めるまでにも多くの工程を必要とします。たとえば島に自生する「車輪梅」の伐採から細断、発酵抽出した染料で約80回以上にわたり手染めを施します。この作業は不可欠で、車輪梅の「タンニン」と泥に含まれる「鉄分」の反応により、はじめて独特の深い色に変化するのです。

伐採、染料の抽出、手染め、川での洗浄までも、泥染めすべてが人の手と島の天然資源を介したもの。職人さんが持つ「島にあるものを使わせてもらっている」という考えには、効率化が進む現代にこそなくてはならない、自然との共存への思いを感じることができます。

長い歴史を辿ってきた伝統技法ながらも、時代の変化とともにその需要は徐々に減ってきています。しかしながら、その状況を受け入れながらも、泥染めという技法をどのように繋いでいくか、様々な方法を考え、模索している姿がそこにはありました。

私たちが依頼した15.5oz "Amami Doro-Zome" Denim Sweatにも、まさにそんな職人さんの思いが形になったものです。大島紬を染める工程の一つであった泥染め。それを洋服に置き換えることで、染めという技法自体は残しつつも、時代のニーズに合った形として新たに進化させているのです。

また、15.5oz "Amami Doro-Zome" Denim Sweatは、インディゴ染めと泥染めを掛け合わせていて、従来の泥染めとは異なる新たな表情があります。本来、黒に染める為の要素に過ぎなかった色の掛け合わせ。依頼した染め屋さんでは、その途中過程にも新たな魅力を見い出したという背景があります。

移りゆく時代の中でその伝統は守りながらも、現代の需要に落とし込んだ新たなアプローチを行うこと。そこには「先人たちが生んだ伝統をこの先も残していけるのではないか」という強い思いがあることを知りました。

新たなアプローチはありながら、奄美大島にしかない資源や限られた環境で、そして人の手で染め上げるという方法は今後も変わることはないのかもしれません。この土地が育んだ豊かな自然と、先人の知恵から生まれた伝統技法にしか、奥深く美しい色合いは生まれないからです。

「島のために何ができるか」「伝統を紡いでいく為にはどうするべきか」という根本にある職人さんの思いは、その言葉と手から強く感じることができました。

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Limited Edition Col. / 15.5oz "Amami Doro-Zome" Denim Sweat

 

 

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