今回の生産背景の舞台は、岡山県・井原市にある老舗の機屋。
創業から77年を迎えた現在、3代目を中心にその高い技術は脈々と受け継がれ、井原の織物文化とともに歩みを続けています。江戸時代から続く綿織物の産地として、井原は良質な水資源を活かした染織技術と、厚地織物における高い評価を築いてきました。
「14oz Okayama Heavy weight Sashiko Big Shoulder / Azuma Bag」の刺子生地は、そんな歴史ある井原の地で織り上げられています。

この生地には、太さの異なる2種の縦糸(16番単糸と9番双糸)を組み合わせるという特殊な設計が用いられています。これは、上下2本のビームを使い分けて糸をセットするという、準備の段階でさえ手間と時間を必要とするもの。
職人の手によって1〜2時間をかけて慎重に行われるこの作業では、約6,000〜7,000本にも及ぶ縦糸一本一本に均等な張力をかける必要があります。1本でもバランスが崩れれば織り全体の品質に直結するため、高い精度と集中力が求められます。

糸の準備を終えた後も、織りの段階では細かなテンションの変化を見極めながら、均一な織り目を保つために、職人が常に微調整を繰り返します。織り上がった生地は、光の加減によって凹凸のある織り模様が立体的に浮かび上がり、視覚的にも奥行きを感じさせる表情に仕上がります。
こうした風合いや立体感は、ただ設計通りに織るだけでは生まれません。織りが始まる前のセッティング段階から一本一本の糸に神経を注ぎ、時間をかけて丁寧に行われる職人の手仕事によって、初めて現れてくるものです。
高品質な生地が生まれる背景には、現場で作業にあたる職人一人ひとりの緻密な手仕事と、長年にわたって磨かれ継承されてきた技術があります。
そして、目に見える美しさだけでなく、触れたときに感じる奥行きや深み。そのすべては、工程の一つひとつに手間を惜しまず、細部まで丁寧に仕上げる職人たちの信念によって形づくられています。
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