遠州の空っ風を利用した、天日干し。静岡県・遠州地域では、土地の気候特性を生かした文化が根付いています。
ここで染色と仕上げを担うのは、創業から40年ほど続く加工場。6人の職人が、生地一反ごとに状態を見ながらこの工程を行っています。

生地の仕上げで重要になるのは、遠州の空っ風を利用した天日干しです。 生地一反を丸ごと屋外に広げ、日光と風で乾燥させる。機械で強制的に乾かすのではなく、自然の力を使うことで、生地にかかるストレスをなくし、ふくらみのある風合いや自然な表情を残します。
天日干しは単なる乾燥工程ではなく、素材感を残すための仕上げとして位置づけられます。

天日干しの後に行われる幅出しにも、風合いを残すためのこだわりがあります。幅出しとは、一定の生地幅に整える工程のこと。
一般的に生地をフラットに仕上げるピンテンターが使われるなか、ここでは希少なクリップテンターを使用。強く固定しすぎず最低限の負荷で整えられるため、天日干しによって生まれた風合いや、心地よい不均一さを残します。

自然乾燥は、今では非効率な方法であると認識されるかもしれません。大量の生地を一反ずつ手作業で干し、取り込み、次の工程へ進めていく。その多くで力作業を必要とし、また、生地の重さや天候にも左右されます。
しかし現場では、効率性よりもまず、素材が持つ本来の質を大切にしています。

遠州特有の天日仕上げは、伝統を残すためだけに続いてきた工程ではありません。
気候の恩恵を感じ、手間にこそ宿る風合いを信じる職人がいるからこそ、現在でも受け継がれています。
