生産背景:静岡県「遠州コール天 / カッチング・剪毛」

生産背景:静岡県「遠州コール天 / カッチング・剪毛」

今回の生産背景の舞台は、国産コール天の産地として知られる静岡県・遠州。1972年から始まる、コール天のカッチング・剪毛を専門とする現場です。

現在、国内で国産コール天のカッチングを行う場所は一社のみ。この場所は、生地の表情をつくる工程が行われると同時に、国産コール天の生産を支える重要な役割を担っています。

ここで行われるのは、生地のパイルをカットし、畝として立ち上げる工程です。織り上がった生地に刃を入れ、パイルを適切な高さに揃えることで、美しい縞の表情を生み出します。

現在使われているのは、1990年代の完全オリジナルのカッチング機。国産コール天として必要なカット精度を出すため、仕様やシステムまでも現場に合わせて幾度も調整してきました。

生地ごとの厚みやパイルの状態に対し、カットの高さや刃の入り方を細かく合わせられることが、クオリティを支える基盤になっています。

カッチングで重要なのは、カット前のセッティングです。生地ごとに厚みや素材の状態が異なるため、カットの高さを決め、細かな確認を重ねながら進めます。

糸を正確な位置に導く「ガイドニードル」とパイルを切る円形の刃「真円カッター」は、どちらも生地に直接触れる繊細な部品。そのため、数百本から千本以上にも及ぶ針の抜き差しや刃の調整を手作業で行います。さらには、刃の微細なブレが畝の出方に影響するため、パーツ一つに対しても、状態を確かめながら手作業で磨いていきます。

現在、カッチング機を扱える職人は1人のみ。ただし、その価値は人数としての希少性だけにあるのではありません。

数値だけでは捉えきれないパイルのわずかな違いを読み取り、コンマ数ミリの調整を施していく。長年コール天と向き合い蓄積された手の感覚・技術がこの工程には必要です。

生地の表情を生み出すカッチング・剪毛。一見すれば生地づくりにある一つの工程ですが、現場ではすべてをマニュアルに置き換えられない難しさがあり、職人の目と手を欠かすことはできません。

日本独自に生まれた美しいコール天生地は、日々、繊細な世界と向き合う職人に支えられています。

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