明治二十二年の創業から135年続くものづくり。現在では、継承された伝統と誇りを五代目が受け継ぎ、来民団扇の魅力を日本全国、また世界へ発信しています。ここで作られるうちわの最大の特徴は、経年による深い味わいと100年使える耐久性を生み出す「柿渋塗り」。
柿渋は日本古来より使用されてきましたが、コストや時間が抑えられる科学染料の使用が一般的になっている現代、目にすること自体が少なくなっています。五代目は見習い当初、労力とコストのかかる非効率な柿渋塗り、また一から作りあげるうちわの製法にさえ疑問を抱いていました。ただ、先代達から受け継がれてきた唯一無二の技術や、一貫して手作業で行うこだわりに日々触れることで、その現代に見合わない非効率さの先に生まれる魅力を知ることができたと言います。
来民団扇の"うちわ作り"には、一般的に想像できる工程よりもさらに手前から始まっています。まず骨組みである竹の準備は、付近の山に出向き、間引きと選定から。うちわに採用するのは、真っ直ぐに成長した4〜5年ものの真竹と限られています。また、来民団扇最大の特徴である柿渋においても、"塗り1年分"の柿を自らの手で採取するところから。大量の豆柿を一つ一つ丁寧に潰し、そこから発酵するまで五年の歳月を経て、初めて塗りの素材として使われるのです。手に取ると感じる来民団扇特有の深みと奥行き。他では決して感じることができない趣の所以には、長い年月をかけた作り手の一手間がありました。
もちろん、うちわが形作られる作業も全て手仕事で行います。一口に”うちわ作り”といっても、その中にある工程ひとつひとつに妥協は許されません。ここではあえて分業制をとることで、出来上がる一枚一枚を一定水準以上のクオリティに保ちます。真竹の一片からつくる「骨組み」、表情のベースが生まれる「和紙貼り」、シルエットが形作られる「形切り」など、どの工程をとっても繊細であり、蓄えられてきた知識と技術があってこそのクオリティであると理解できます。
各工程で職人ひとり一人の手から生み出されていく様々な表情のうちわ。実際にどのうちわを手に取っても一切の妥協はありません。現代では"効率化"が当たり前の認識としてある中、揺るぎない一貫した手しごとと天然素材100%のこだわり。なによりも先代達から受け継がれてきた"真の上質さを届けたい"という思いが、そこにはありました。職人ひとり一人の中に通ずるこの強い思いこそが、来民団扇が日本で、また世界で求められ続ける理由なのかもしれません。