後世に残る物作りとは?長く使うことで愛着の湧く物作りとは?という問いの答えを探すために日々の物作りで検証を繰り返しています。
後世に残るということは、見た目のビジュアルデザインもしかり、プロダクトとしての耐久性や変化も伴っている必要があると考えています。
シンプルな物は、流行の先端にはなれないけど、飽きがなく長く使っていく魅力があると、自身の持っている様々な製品を通して感じています。
特に感じる魅力は、使い込んでいくうちに、素材が持つ本来の魅力が表面に出てくること。
いわゆる新品にはない、時間をかけて使い込んだからこその痕跡や味わいが製品にもたらす変化です。
それ故に製品を作る段階で、経年変化後の完成形を考えて、適切な素材を選ぶ必要があります。
こちらのバッグは、未使用の状態です。日本でも有数の生地産地で知られている岡山県・倉敷市で130年続く機屋さんで織っていただいた帆布です。
130年続く歴史から、こちらの機屋さんでは日本に数台しかないベルギー産の旧式シャトル織り機を使ってMOLTEMANIの生地を織っていただきました。
旧式シャトル織り機で織り上げられた生地は、まさに経年変化する製品作りに欠かせないものと言えます。
量産の生地と比較して、ゆっくりと丁寧に織る工程が必要なので生産性に劣る部分はありますが、そのゆっくりと織るということで生まれる独特の凹凸や風合いが、使い込んだ後の生地の見た目や、風合いに変化をもたらしてくれます。
こちらのバッグは、使用し始めてから4ヶ月経過したものです。色落ちの「アタリ」と言われる部分がくっきりと跡を残し、使い手がどのように使用したかということが、生地に反映されています。これこそが、経年変化するものの最大の魅力でもあると感じています。
使い込むことでしかなし得ない、独特の風合いと質感、色合い。
旧式シャトル織り機で織った帆布に、天然染めを施すからこそ、生まれる製品です。
長い時間をかけて自分だけのものに仕上げていく過程もまた、楽しみの一つではないでしょか。
今回の検証を通して、後世に残る物作りとは?長く使うことで愛着の湧く物作りとは?という問いの答えに少し近づけた気がします。