今回訪れたのは、「13.5oz Okayama Denim Cap / Hat」のセルビッチデニムが織られている、岡山県井原市の機屋です。創業から70年以上、職人の経験と工夫によって今もなおこの土地の織物づくりを支えています。
この工場にあるのは、40年以上にわたり使い続けられてきた希少な旧式シャトル織機。今では非効率とされる織機ですが、そこから生まれる生地には、他では得られない独特な風合いと、そこに込められた職人の思いがあります。

井原市は、デニムを中心とした繊維の名産地として知られる土地。創業当初この機屋では、セルビッチデニムの生産にも比較的早い段階から取り組み、今では旧式織機による生地づくりを支える存在となっています。
ここで生み出される生地の多くは、時代や効率に流されない“奥行き”を感じさせるもの。主に使われているのが、今では生産さえされていないシャトル織機。特徴は、木管に糸を巻いたシャトルが往復して糸を織っていくという昔ながらの仕組みです。
1時間に織れる生地はわずか5メートル前後。今の高速織機の1/2以下のスピードですが、だからこそ糸に余分なテンションがかからず、自然な凹凸と膨らみのある生地に仕上がります。

この「13.5oz」のデニムも、そんな旧式織機によってじっくりと織られています。古い織機ゆえ、部品の入手も簡単ではなく、長年のつき合いと知識を頼りに動かし続けています。故障や不調があってもマニュアルは存在せず、頼れるのは職人たちの経験と勘だけ。こうした技術の積み重ねが、今も現場を支えています。
さらに、この織機では20cm織るごとにシャトルの木管が切り替わる仕組みのため、1日で200回以上の補充作業が必要になります。生地を織るだけでなく、そのひとつひとつの手間こそが、仕上がりの味を決める工程になっているのです。
今回の「13.5oz Okayama Denim Cap / Hat」に使われている生地は、ただ厚みがあるだけでなく、どこか粗さを含んだような自然な風合いが魅力です。こうした表情は、旧式の織機でしか表現できないもの。この工場では、旧式の織機にさらに独自の改良を加えることで、こうした風合いを保ちつつ、生産の安定性を高めています。
職人たちは毎日、織機のわずかな音の変化や糸のテンションの違いを感じ取りながら作業を続けています。ひと織りごとに丁寧な手をかけるこうした積み重ねが、この地域に根づいてきた技術であり、今も織物の産地として名を残す理由のひとつです。

最新設備でも効率でもなく、こだわりのために"時間と手間”をかける織りの現場。 時代に逆行するような機械と作業工程ですが、その理由には大量生産では決して出せないたった一つの魅力があります。
商品そのものだけでは決して伝えきれない生産背景。この記事を通してその一端に触れることで、より深く愛着を持ってもらえたらと思っています。
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